【Vanta導入企業向け】監査法人の選び方
近年、VantaやDrataといったGRCツールの導入を前提として、その後に監査法人を選定するケースが増えています。従来は、まず監査法人を選定し、その進め方に沿ってSOC2対応を進めるのが一般的でしたが、この順序が逆転しつつあります。
ただし、すべての監査法人がGRCツールを活用した監査(検証)に積極的とは限りません。ツールの特徴を十分に理解していない、あるいは対応に消極的な監査法人も一定数存在します。
監査法人の選択肢
Vanta等のGRCツールを利用する場合、監査法人の選択肢は大きく以下の2つに分けられます。
- GRCツールベンダーから紹介される監査法人
- 自社で選定する監査法人
GRCツールベンダーから紹介される監査法人には海外の監査法人が含まれることが多く、日本の監査法人と比較して低い報酬水準が提示されるケースも見られます。一見すると合理的に見えますが、価格だけで判断することには注意が必要です。
「安さ」の背景にあるリスク
近年、SOC2を巡っては、短期間・低価格での発行を謳うサービスに対する懸念が指摘されています。例えば、AICPA Journalでも、こうした動きがSOCレポートの信頼性を損なう可能性について言及されています。
Promises of ‘fast and easy’ threaten SOC credibility
形式的な統制や検証に依存した結果、レポートの品質や信頼性に疑義が生じるケースが報告されています。
実務レベルにおいても、海外の監査法人を利用する場合にはこれらの負担が生じます。
- 日本語で作成された規程や証憑の確認に伴うコミュニケーションコスト
- 日本語でのSOC2レポート発行が困難
- 日本の法規制や業界ガイドラインへの理解不足
特に、言語の違いによるコミュニケーションは想定以上に難易度が高く、母国語であっても調整が難しい監査対応では負担が大きくなりがちです。単に翻訳ツールで補えるものではなく、統制の考え方や監査における水準感の違いも影響し、認識のズレや手戻りが生じやすくなります。
また、SOC2検証で用いられるTrustサービス規準(TSP Section 100)では、自社のサービスコミットメントの達成に加え、関連する法規制や業界団体が求めるガイドラインへの対応が前提とされています。この点を踏まえると、各国固有の法規制や実務慣行に対する理解が十分でない監査法人が業務を担うことは、本来的には想定されていない構造とも言えます。
なぜ監査法人選定が重要なのか
SOC2は一度取得すれば終わりではなく、継続的な監査(検証)が前提となります。そのため、初回の選定は単年度のコストだけでなく、その後の運用負荷やコミュニケーションの質に影響します。監査法人との連携がうまくいかない場合、監査対応が滞り、レポート発行のタイミングが遅延する可能性があります。SOC2レポートは顧客への提示を前提とするケースが多いため、更新が滞ることで、顧客対応や営業活動に影響が及ぶリスクもあります。
かといって、一度決めた監査法人を変更することも想像以上にコストがかかる対応です。新たな監査法人に対して、自社のサービス内容や統制の前提、これまでの運用状況を改めて説明する必要があり、証憑の整理や統制記述の見直しが発生するケースも少なくありません。また、監査法人ごとに求める水準や見方が異なるため、これまで問題とされなかった点が新たに指摘されることもあり、結果として追加対応や手戻りが生じる可能性もあります。
まとめ
以上を踏まえると、監査法人の選定は単なる価格比較ではなく、自社の目的やフェーズを踏まえて慎重に検討する必要があります。
GRCツールの活用が徐々に広がりつつある中で、ツールの特徴と監査実務の双方を踏まえた対応が求められます。金銭面でのコストに加え、コミュニケーション負荷や実務対応のしやすさ、継続的な運用に伴う負担といった観点も含めて判断することが、結果として無理のないSOC2レポート発行につながります。
