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SOC2コラム

SOC2 Column

Vanta × SOC2取得_内部統制整備/エビデンス収集編

~ よくあるつまずきと実践的な対応策 ~

SOC2の取得に向けてVantaを活用する企業が増えていますが、導入後に「思ったより大変」「結局コストも時間もかかった」といった声も少なくありません。本稿では、Vantaを用いた内部統制の整備とエビデンス収集に関して、現場でよく見られる課題とその対処法について解説します。


■ Vantaにおけるコントロールとエビデンスの仕組み

Vantaでは、各トラストサービス基準に対応する一般的な内部統制(コントロール)があらかじめデフォルトで設定されています。これは、Vanta側が「この統制が整備・運用されていれば、当該基準は原則として充足されるだろう」という前提に基づいて構成されたものです。

さらに、それぞれのコントロールに紐づく形で、提出すべき典型的なエビデンス(証跡)もVanta上に定義されています。エビデンス収集方法には2つのパターンがあります:

  1. 手動アップロード型(通称”Document”):会社側が自ら資料を収集し、Vanta上にアップロードする形式。どのような書類が必要かは事前にVanta内で明示されています。
  2. 自動テスト型(通称”Automated Test”):AWSやGitHubなどの外部ツールとVantaを連携(インテグレーション)させ、該当データを自動で収集・判定する仕組み。検証結果は「パス/非パス」として表示され、証跡としてJSONコードが添付されます。

■ よくある3つの壁とその対応策

① 想定された証跡が存在せず、別の資料で対応したい

Vantaが想定しているエビデンスが自社には存在せず、代替のエビデンスで対応したいというケースは珍しくありません。この場合、まずは監査法人に相談しましょう。SOC2に関する実績と知見のある監査法人であれば、リスクベースで合理的に判断し、柔軟な対応をしてくれるはずです。


② 必要な情報セキュリティ関連規程の整備

SOC2では、以下のような情報セキュリティ関連規程の整備が求められます:

  • アクセス管理ポリシー
  • システム開発・変更管理規程
  • 暗号化ポリシー
  • 情報資産管理規程(保存・廃棄ルール含む)
  • インシデント対応規程
  • 事業継続計画(BCP) など

これらはVanta上にテンプレートが用意されており、テンプレートを基に作成すれば、規程整備の第一段階はクリアできます(※ただし、実態が伴うように調整することが前提です)。

なお、すでに社内で独自に規程が整備されている場合は、SOC2用に作り直す必要はありません。既存の規程をそのまま提出すれば十分です。ただし注意したいのが、海外の監査法人を選んだ場合、日本語の規程を十分に読もうとせず、エビデンスとして不適格とされるリスクです。こうしたケースでは、不毛な翻訳作業や規程の再作成を強いられ、無駄な時間とコストが発生してしまいます。


③ デフォルトのコントロールに対応できない(または不要と判断)

Vantaでは、各トラストサービス基準に対応したコントロールがあらかじめ設定されており、それに沿って整備が進めば、SOC2の基準を満たしているとみなす構造になっています。

しかし、現実的には「構造的にリスクが低いため導入していない」「他の統制が補完しており、実質的にカバーできている」といった事情で、あるコントロールが未導入というケースもあります。

このような場合、単に「整備されていないから導入する」といった思考停止的な対応ではなく、自社の実態に合った代替コントロールをVanta上に追加し、適切なエビデンスをアップロードすることで、合理的な判断を得られる可能性があります。

ここでも重要なのは、経験豊富な監査法人と連携し、リスクベースで柔軟に評価してもらうことです。


■ 結論:Vantaを「使いこなす」ために必要な視点

Vantaは非常に便利なツールである一方、「すべてをそのまま鵜呑みにする」のではなく、トラストサービス基準に照らして自社の統制が本当に適切かどうかを自ら判断する姿勢が重要です。

  • 自社の状況に応じて、コントロールの取捨選択を行う
  • エビデンスの代替が必要なら、その理由と根拠を整理する
  • 疑問があれば、知見ある監査法人と相談し、建設的な対話を行う

これらのポイントを押さえておかないと、せっかく「早く・安くSOC2を取得できる」と聞いてVantaを導入しても、思わぬ技術的負担や証跡収集工数、監査対応コストの増大、最悪の場合にはSOC2取得の遅延やそれに伴う売上機会の逸失など、本末転倒な結果につながりかねません。

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