SOC2取得方法_最短でSOC2を取得するために押さえておくべき3つのポイント
―成功事例から学ぶ効率的な取得プロセスと体制整備―
昨今、クラウドサービスを利用する企業が増えるなか、受託企業に対するセキュリティや内部統制への信頼性を第三者が評価する「SOC2報告書」の取得ニーズが急増しています。しかし、初めての取得では、何から手をつければよいか分からず、無駄な時間とリソースを費やしてしまうケースが非常に多く見受けられます。
そこで本コラムでは、SOC2を最短・最速で取得するために押さえておくべき3つの重要なポイントを、実際の成功・失敗事例から具体的に解説いたします。
① トップダウンによる「SOC2プロジェクト体制」の構築がカギ
SOC2の取得にあたって最も重要なのは、「トップダウンのプロジェクト体制」を整備することです。SOC2対応には、多岐にわたる部署へのヒアリングや資料提供の依頼が必要です。
残念ながら、担当部署が通常業務に追われ、SOC2対応を後回しにしてしまうケースが散見されます。このような状況では、監査法人によるreadiness check(統制状況確認)が進まず、取得のスケジュールがどんどん後ろ倒しになります。
スムーズに進めることができた企業の多くは、SOC2取得を会社の重要な経営目標(KPI)として設定し、社長や経営層が主導して社内の各部門へ積極的な協力を促しています。
逆に、遅延する典型的パターンとしては、担当窓口がシステム環境を把握できない担当者で、エンジニア(SREや開発部門)との連携が取れない場合です。「忙しそうだから」と監査法人からの依頼を社内展開しないまま、自分で不確かな回答を出してしまうこともあります。その結果、監査法人側の再確認や証跡収集が増え、大幅な時間ロスが発生します。このパターンは最も避けるべきでしょう。
② SOC2に関する実績と知見が豊富な監査法人を選ぶこと
海外に比べると、日本国内ではSOC2の認知度が依然として低く、書籍やインターネット上の情報も十分とは言えません。また、トラストサービス基準や保証基準といったSOC2の規準は難解かつ抽象的であり、実務経験がなければ、適切な内部統制の構築や記述書の作成が困難です。
ここで重要となるのが、十分な実績やノウハウを有する監査法人を選ぶことです。知識や経験が乏しい監査法人に依頼すると、対応が非効率になるだけでなく、レポートの品質が低くなり、ユーザーが求める情報が十分に開示されないリスクもあります。
一方、実績ある監査法人であれば、readiness checkから改善提案、レポート作成指導、そしてTYPE1やTYPE2の検証まで、合理的かつ効率的に進められます。結果として、企業側の作業負担や人的リソースを大幅に軽減できるため、たとえ監査報酬が若干高くても、トータルコストはむしろ低く抑えられます。
無検討に「安さ」だけを基準に監査法人を選んでしまうと、いわゆる「安かろう悪かろう」の状態に陥りかねません。その結果、無駄な人的リソースの消費や時間のロスが発生し、さらにはSOC2報告書の取得が遅れることで、売上の機会損失が生じ、結果的にコストが高くつくことになります。
近年では、海外の監査法人が低価格での対応を提案するケースも見られますが、言語の壁や日本とは異なるガバナンス構造の違いから、コミュニケーションコストが想定以上にかかる傾向にあります。実績や知見に乏しい監査法人に依頼してしまうと、プロジェクトが思うように進まず、最終的にSOC2報告書を取得できなかったという事例も実際に報告されています。
こうしたリスクを踏まえ、海外の監査法人と契約する際には、費用面だけでなく、実績や対応力を含めた総合的な観点から慎重に判断することが重要です。
③ SOC2取得のメリットと、早期対応の必要性を認識する
最後のポイントは、「SOC2を取得することで得られるメリットをしっかり理解し、迅速に行動を起こす」ことです。
SOC2取得のメリットについては別コラムでも詳述していますが、SOC2取得企業は対外的な信頼性が高まり、取引条件としてSOC2を必須とする顧客との取引を獲得しやすくなります。実際、取得にかかるコストをはるかに上回るリターンを得られるケースも多いのです。
それにもかかわらず、「取得できるか不安」「社内体制が整っていない」といった理由から、SOC2取得に二の足を踏む企業は少なくありません。しかし、ユーザーからのSOC2に対する要求は日々高まっており、競合他社も着実に取得に向けて動き出しています。
気づいたときには、競合がすでにSOC2を取得済みで、取引条件としてSOC2取得が“マスト”になっていた――そんな未来が訪れてしまえば、もはや取り返しがつきません。ユーザーからSOC2の取得を必須要件として提示された段階で慌てても、迅速な対応は難しく、ビジネスチャンスを逸するリスクは高まります。
競争力を維持し、将来のビジネスを確実に掴むためにも、今すぐにSOC2取得に向けた準備に着手することが何よりも重要です。