なぜ今、データセンター事業者にとってSOC2が“必須”になるのか
―ユーザー企業のニーズから逆算して考える
「うちはISOやFISCの認証を取っている。設備も冗長化している。これ以上、本当にSOC2まで必要なのか?」
多くのデータセンター事業者が、心のどこかでそう感じているはずです。
しかし、ユーザー企業側の視点で見ると、状況は少し違って見えます。
- 取締役会・監査役会・親会社に対する 説明責任
- 規制当局や監督官庁に対する コンプライアンス対応
- 海外本社やグローバルIT部門との共通言語としての基準
こうした背景を踏まえると、ユーザー企業にとっては
「SOC2を提示できるデータセンターかどうか」
が、今後ますます重要になっていきます。
本コラムでは、ユーザー企業が何を求めているのかという視点から、なぜデータセンター事業者にとってSOC2が重要なのかを整理します。
1. ユーザー企業から見たデータセンター
「単なる置き場」ではなく「自社IT統制の一部」
ユーザー企業にとって、データセンターはただの「サーバーの置き場」ではありません。
- 物理セキュリティ
- 電源・空調・ネットワークの運用
- 24時間365日の監視・障害対応
- バックアップ・復旧
これらは本来、自社が責任を持つべき内部統制の一部です。ユーザー企業は、その重要な領域をデータセンター事業者にアウトソースしています。
ユーザー企業からすると、
「このデータセンターの運用レベル = 自社のIT統制レベル」
とユーザー企業のサービス利用者からみなされます。
だからこそ、ユーザー側は次のような問いを持っています。
- 「このデータセンター事業者に預けて、セキュリティ上問題ないか?」
- 「万が一事故があったとき、取締役会あるいは株主にどう説明できるのか?」
こうした不安を解消するための“共通の証拠”として、SOC2が求められています。
2. ユーザー企業は、5つの観点を気にしている
情報セキュリティ・可用性・処理の整合性・機密保持・プライバシー
SOC2の5つの観点は、ユーザー企業の関心事そのものです。特に、情報セキュリティ・可用性・機密保持については、次のポイントで関心が高い傾向があります。
情報セキュリティ(Security)
ユーザーの本音:
「“セキュアです”と言われても、どこまでやっているのか見えない」
- 物理入退室管理
- 特権ID管理
- 委託先管理
- インシデント対応
こうした管理体制が設計され、実際に運用した実績があることを、データセンター管理者本人からの説明ではなく第三者評価で確認したいと考えています。
可用性(Availability)
ユーザーの本音:
「SLAの数字だけでは、どこまで本当に備えているか分からない」
可用性は、簡単に言えば 「止まらないこと」 です。
- 電源系統の二重化
- 空調・ネットワークの冗長構成
- 定期メンテナンスの計画と実行
- 障害時のエスカレーションと復旧プロセス
さらにユーザーは、「止めないこと」だけでなく、
「止まりそうになったときに、どのように影響を最小限に抑えられる体制か」
という点も重視しています。
その運用統制を説明する材料として、SOC2の“可用性”の評価があるかどうか が効いてきます。
機密保持(Confidentiality)
ユーザーの本音:
「データセンター側の誰が、どこまで見えるのか知りたい」
- 重要情報を扱うエリアでのアクセス制限
- 社員・委託先(警備会社等)の権限管理
- ラック単位での例外運用の有無
など、細かな運用までユーザーが追い切るのは困難です。
「機密が漏れないようにしています」という説明だけではなく、
「こういう統制があり、第三者により運用状況が評価されています」
と言えることが、ユーザーの安心につながります。
3. ユーザー企業にとっての「SOC2」の意味
自社の説明責任を支える“証拠”としての価値
ユーザー企業は、関係者から次のような要求を受けています。
- 取締役会: 「外部データセンターの利用(=外部委託)によるリスクはどう管理しているのか?」
- 親会社・海外本社: 「データセンターは、グローバル基準で見て安心できるインフラなのか?」
- 取引先: 「委託先であるデータセンターのセキュリティ体制は大丈夫なのか?」
その際に提示できるものが、データセンター事業者自身が発行するパンフレット/説明資料やISMSの認証書だけでは、具体的な評価方法や第三者的な視点の観点において、どうしても説得力に欠けます。
一方でSOC2報告書があれば、前述のポイントについて独立した監査人が検証を行い、保証を付与した結果 を、一つのレポートとして明確に示すことができます。
したがって、ユーザー企業にとってSOC2報告書の取得状況は、
「データセンターを選ぶときのチェック項目」
であると同時に、
「社内・社外への説明責任を果たすための強力な証拠」
なのです。
4. SOC2を持たないことによる“見えない機会損失”
ユーザーの視点に立つと、SOC2報告書の提示ができないことには次のようなリスクがあります。
- RFPの段階で、無言のうちに候補から外れる
近年のRFPやセキュリティチェックシートには、一般的に
- 「最新のSOC2 Type2レポートの提出可否」
といった項目が含まれます。
ここで「なし」と答えた瞬間に、設備や価格とは関係なく候補から外れる可能性があります。
特に金融・上場企業では、コンプライアンス/ガバナンスの観点からISO認証に加え、SOC2を重視する傾向が強く、SOC2を持たないデータセンターはそもそも比較テーブルに乗らないケースが増えています。特に提供サービスが類似する同業他社の取得状況には注意が必要です。
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